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Webサイトにパーソナライズド動画/インタラクティブ動画を導入するメリット
テキストと画像で構成されるWebページ(静的コンテンツ*)や、「観る」以外に選択の余地のない一般的な動画に比べ、「情報が伝わりやすい」とされるパーソナライズド動画やインタラクティブ動画。でも実際に自社のWeb戦略に採用してみようとなると、なぜユーザーに深くリーチできるのか、漠然としか理解できていない方も多いのではないでしょうか。
本稿では「情報の伝わりやすさ」にフォーカスして、パーソナライズド動画やインタラクティブ動画について解説します。
具体的にどのように伝わりやすく、どんなメリットが得られるのか、ポイントを絞って見ていきましょう。
*静的コンテンツ
テキストや静止画で構成されるWebページ。
映像・アニメーション・CG・音声などから構成される動画は、静的コンテンツに対してリッチコンテンツと呼ばれる。
ユニバーサルデザインの視点によるメリット
インターネットにあふれる資産形成や資産運用の情報。気になって覗いてみることもあると思いますが、「文字・文章だらけ」「専門用語が多い」「グラフが難解」など近寄りがたい印象にそっとページ閉じた…そんな経験、お持ちではないでしょうか。
本来、保険・金融商品は誰もが平等に利用できるもの。
「難解だから諦める」ようなことがあってはならないはずです。
こうした状況は保険会社や銀行にとって、単なるリード(見込み客)の取り逃がしという以前に、企業体質そのものが問われるより根深い問題です。
そのため企業側でもありとあらゆる編集スキル・デザインスキルを駆使してWebページやパンフレットを制作するのですが、画面や紙面である以上、「文字や画像を目で追わなければいけない」という弱点が解消されるわけではありません。
そんな中、近年注目を集めたのが、オリックス生命保険がパーソナライズド動画を採用して制作した給付金請求手続き解説動画でした。
この動画は2019年のUCDAアワード*で「情報のわかりやすさ賞」を受賞。
さらに2年後には三井住友銀行が、動画内に選択肢を設けたインタラクティブ動画『おかねのおしたく』でUCDAアワード2021を受賞。
生活者目線に寄り添った、初心者や高齢者にも金融商品が理解しやすいコンテンツ開発が受賞につながりました。
これらの動画が、パンフレットなどの既存ツールはもちろん、一般的な動画やWebページと一線を画するコミュニケーションデザインを実現できたのはなぜなのでしょう。
それぞれのメリットを次項以降で確認していきましょう。
*UCDAアワード
ユニバーサルデザインの思想をベースに、「情報の送り手と受け手の間にある壁を取り除き、伝達効率を高めるためのデザイン」をユニバーサルコミュニケーションデザインと定義し、一般社団法人ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会(UACD)**が2010年から実施している表彰事業。
**一般社団法人ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会(UCDA)
保険・金融商品の説明資料や申込書、食品・医薬品のパッケージ表示など人々の生命・財産・健康に関わる重要な情報が「見やすく、わかりやすく、伝わりやすく」デザインされているかを評価・認証している第三者機関。
オリックス生命保険株式会社:ニュースリリース(2019年11月1日)
https://www.orixlife.co.jp/about/news/2019/20191101.html
UCDAアワード2019各賞の紹介:
https://ucda.jp/awards/award2019_senkou_kekka/
株式会社三井住友銀行:ニュースリリース(2021年10月27日)
https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20211027_01.pdf
UCDAアワード2021各賞の紹介:
https://ucda.jp/awards/award2021_result06/
インタラクティブ化のメリット
知りたい情報を、動画上で視聴者自ら選択できるインタラクティブ動画のメリットについて説明します。
スクロール&クリックアクションを削減できる →離脱率低減できる
インタラクティブ動画をファーストビューに配置すると、離脱率の低減が期待できます。
訪問したサイトで欲しい情報がすぐに見つからないと、閲覧者は情報を探してサイト内をうろうろと回遊し始めます。
こうした行動に伴うスクロールやクリックは、サイトからの離脱と相関するアクションと考えられています。
このような場合、画面スクロールやページ遷移のきっかけをできるだけ与えないように画面設計をすると効果的です。
インタラクティブ動画は、サイトを訪問したらすぐ目に入るエリアに配置してみましょう。
ワンウェイ/インタラクティブによる情報量の差 →インタラクティブの方がコンバージョン率UP
インタラクティブ動画は、コンバージョン率(CVR)*向上に効果的です。
一般的な動画は、リンクボタンなどのクリッカブルな要素を動画内に設けることはできません。
その点インタラクティブ動画は、視聴者が自分の意志でクリックして次のシーンを選択し、「知りたい」というモチベーションを維持しながら視聴する動画のため、視聴時間の長さに比例して理解度が深まり、コンバージョン**を達成しやすいという利点があります。
動画内に埋め込んだCTAボタン***から商品購入ページや申し込みフォームにダイレクトに誘導し、コンバージョンに直結させることもできます。
効果測定ももちろん可能です。
*コンバージョン率(CVR)
コンバージョン率(CVR)=コンバージョン数(CV)÷訪問数(セッション数)×100(%)
**コンバージョン
Webサイト上のカスタマージャーニーのゴールとして設定されるアクション。
Webサイトごとに「商品購入」「資料請求」「タップコール(電話の発信)」などがコンバージョンとして定義される。
広告運用においてはコンバージョンをいくつか設定し、それぞれに異なるコンバージョン値を与えて効果測定することも一般的。
***CTAボタン
アクション喚起(Call To Action)のためのボタン。サイト訪問者に対してクリックを促してコンバージョンを達成させるためのボタン。
パーソナライズ化によるメリット
視聴者に合わせた情報の出し分けができるパーソナライズド動画。
パーソナライズド動画だと分かり易い
現在ではさまざまな業界・業種で活用されているパーソナライズド動画。
その最大のメリットは「伝わりやすさ」。
保険・金融業界では早い段階からここに着目していました。
保険・金融商品のプロモーションの難しさは、「何がどう違うのかパッと見では分からない」ところにあります。
だから一度にたくさん紹介するのは逆効果。資産形成や資産運用の初心者ならなおのこと。
「どれもピンと来ない」「押しつけられている」と感じてかえって興味が削がれることさえあります。
しかしパーソナライズド動画を用いれば、例えばパーソナライズ項目に設定した属性A(商品利用履歴)と属性B(年齢層)が以下のようにそれぞれ3パターンに細分化される場合、最大で9通りの出し分けが可能になり、視聴者が必要とする情報だけに絞り込んで届けることができます。
一度に9種類を紹介される場合と比べたらその「伝わりやすさ」は歴然です。
[属性A]商品利用履歴
A-1:リクスゼロ商品
A-2:リクス低商品
A-3:リクス中商品
[属性B]年齢層
B-1:20代
B-2:30代
B-3:40代
[属性A]×[属性B]→次におすすめする商品
A-1×B-1→商品あ
A-1×B-2→商品い
A-1×B-3→商品う
A-2×B-1→商品え
A-2×B-2→商品お
A-2×B-3→商品か
A-3×B-1→商品き
A-3×B-2→商品く
A-3×B-3→商品け
一様/パーソナライズによる成果の差
パーソナライズ動画は、「自分に関係の無い情報」というミスマッチが起こりづらく、「納得感」が深まることでコンバージョンにつながりやすい手法です。
Webマーケティングの世界ではコンバージョン率向上のための方法論が日々喧伝されていますが、どんな方法でもコンバージョン達成には商品・サービスに対する「納得感」が不可欠とされています。
例えば、従来の動画マーケティングでは、
属性A=商品利用履歴
属性B=年齢層
属性C=収入
属性D=家族構成
といったデータから「こんな訴求をすれば刺さるだろう」という仮定を導き出し、それに基づいて動画を制作・配信しています。
と聞くと、一見データドリブンな手法のように思えるかもしれませんが実はそうでもありません。
前述した通り、視聴者ニーズは実際はもっとずっと細分化されているため、人がデータを読み解いただけのターゲティングでは「納得感」は高かったり低かったりバラバラという結果になります。
一方、これらの属性をパーソナライズ項目に設定し、文言や画像を個人レベルで自動的に出し分けできるパーソナライズド動画は、視聴者一人ひとりに最適化した情報をムダ無く届けることで、高いレベルで「納得感」を感じてもらうことができます。
動画によるメリット
静的コンテンツから動画に置き換えたことでコンバージョン率UP
動画の強みは、
- 閲覧者のアテンションを喚起できる
- 同じ閲覧時間でも、静的コンテンツよりも多くの情報を届けることができる
- 難解な説明をより感覚的に理解してもらえる
このようなユーザーフレンドリーなアプローチを可能にする「表現力」にあります。
Yahoo! JAPANは、2022年に実施した調査で、同一商材の広告の成果を「静止画のみ配信」vs「動画と静止画を並行配信」で比較したところ、並行配信では静止画のみの場合の3倍を超えるコンバージョン率を計測したと発表。
この結果から「ユーザーが広告内で多くの情報を得たうえでクリックするため(中略)コンバージョン率が高くなりやすい」と動画広告について考察しています。
もし今、静的コンテンツで思うような成果が上がっていないのであれば、動画ならどんなプロモーションができるのか、一度探ってみてもいいかもしれませんね。
Yahoo! 広告 公式ラーニングポータル
「動画広告を配信するメリットとは?」(Yahoo! JAPAN)
https://ads-promo.yahoo.co.jp/online/v_ads_merit.html
まとめ
すでにコンテツンマーケティング*の要になりつつある動画コンテンツですが、その中でもインタラクティブ動画やパーソナライズド動画が「伝わりやすい」と評価されているのはなぜか。
本稿を読んでお分かりいただけたと思います。
そもそも動画には、静的コンテンツに対して以下のような優位点があります。
- リッチコンテンツならではの「表現力」「情報量」
- 視聴者のアテンションを喚起できる
- 直感的・感覚的に伝わる
さらにインタラクティブ動画やパーソナライズド動画には、従来の動画に対して以下のような優位点が挙げられます。
- 受け手それぞれの興味関心・理解度に最適化された視聴体験を提供できる
- 視聴者に関係の無い情報を見る必要がない
- ムダなサイト回遊をしなくていい
- CTAボタンを動画内に表示できる(コンバージョンに誘導できる)
現行の静的コンテンツや動画マーケティングでは成果が頭打ちという状況があるなら、インタラクティブ動画やパーソナライズド動画は次の有力な選択肢と言えるかもしれませんね。
*コンテツンマーケティング
ユーザーにとって有益な情報発信をすることで購買意欲を醸成したり、ファン層を育てるマーケティング手法。
Web戦略における広告への依存度を下げる効果が期待できるとされている。