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2021年2月3日

[対談] 共同印刷×W CREATIVE
協業が切り拓く動画マーケティングの可能性

協業を進める共同印刷の動画配信プラットフォームの「OneDouga(ワンドウガ)クラウド」とW CREATIVE(ダブルクリエイティブ)の動画制作に特化したクラウドソーシング。急速に成長する動画マーケティングの領域で活躍する磯野周司(共同印刷 OneDougaクラウド プロダクトマネージャー、写真左)と小川大介氏(W CREATIVE代表取締役、写真右)の対談から、今後の企業の動画コンテンツ活用のポイントと展望をご紹介します。

協業のメリットは、動画制作から配信、視聴データの活用支援まで、お客さまの多種多様な要望に対応できるようになること。

――まずは両社の事業内容と協業の展望についてお話ください。

磯野:共同印刷の「OneDougaクラウド」はパーソナライズド動画、セグメント動画、インタラクティブ動画、個人視聴データ取得動画という4種類の動画配信が可能な、企業向けの動画配信プラットフォームです。
顧客となる企業からすると、

  1.  クラウドサービスなので企業側でのシステム構築が不要
  2.  個別の視聴者に最適化した動画配信による情報伝達力、訴求力の向上
  3.  DX※1への取り組みとして個人単位でのデータ活用の支援
    などの特徴がニーズにマッチすると、ご好評いただいています。
    ※1 デジタルトランスフォーメーション:データとデジタル技術を活用し、製品・サービス・ビジネスモデル、ひいては企業の業務・組織を改善する取り組み。
    OneDougaクラウド:https://www.onedouga.jp/
OneDougaクラウドの事業イメージ

小川:W CREATIVEはクラウドソーシングに特化した企業向け動画制作サービスの提供に加え、最近重要度を増している「作った後の活用」もトータルでサポートしています。動画マーケティングのコンサル支援、YouTubeチャンネルや企業のSNS運用支援、インフルエンサーマーケティングなどにも対応し、企業の動画マーケティングを幅広く支援しています。

W CREATIVE:https://www.w-creative.tv/

磯野:現在、「OneDougaクラウド」を提供するなかで、企業の動画ニーズには制作面の課題が多いと感じています。我々の主業はプラットフォームによる配信サービスの提供ですが、制作から配信までをサポートすることも多いです。W CREATIVEさんと組むことで制作のさらなるリソース獲得とクリエイティブ強化につながると考えています。

小川:我々のクリエイターズネットワークを外部のクリエイティブリソースとして活用いただくのは、双方の明確なメリットになりますね。一般的なクラウドソーシング型動画制作では、発注主がクリエイターを選ばなければいけません。しかし、どのクリエイターを選ぶかという基準を持つのは難しく、発注側としてのノウハウが必要です。実績や価格という表面的な情報だけで判断するとアンマッチになるケースが多く、プロジェクト成功にはクリエイティブの特性に適したクリエイターを選定することが重要です。

磯野:ポートフォリオだけではわからないことも多いですよね。

小川:そうですね。私もさまざまなクラウドソーシングのクリエイターを見ていますが、ポートフォリオに掲載されている案件でも、実際に関わったのはごく一部、というケースも少なくありません。案件を通して関わることで、はじめて実力や適性が見えることも多々あります。企業とクリエイターの間にW CREATIVEが入り、選定や制作・進行管理を行うことで、潤沢なリソースを適切に選定・管理・ケアしながら制作を進めることができます。それにより、多種多様な業種や目的、ニーズに対して常に適切なクリエイティブとマーケティング支援を提供できるチームを組むことができると考えています。

磯野:当社から依頼する場合は、当社側の体制やお客さまからの要望などに応じて、な組み方ができることは非常に魅力的ですね。

コロナが企業のDXを加速し、動画のニーズが高まった。動画を有効活用した企業が一歩先に行く状況です。

――今年は新型コロナウイルスにより、マーケティングに激変が起きました。動画マーケティングではどのような変化が起きたのでしょうか。

磯野:コロナの影響により、特に大企業でDXの流れが大きく進んだ印象です。感覚ではありますが、取り組みのタイミングが半年から1年近く早まっています。そのなかでやはり動画のニーズは高まっていますね。
特に、「営業支援動画」のニーズが大きく変化しています。オフライン集客がとても困難な状況を受け、従来の対面型営業が難しくなっている場面もあるようですね。
例えば保険代理店では、「ウェビナー※2化した全体説明会や相談会からオフラインの個別相談への誘導を強化したい」というニーズがありました。従来の対面での全体説明会や相談会と比較して、個別相談につなげることが難しいため、インタラクティブ動画※3を使用して、オンラインでユーザーとのコミュニケーションを高める施策を解決策として導入する予定です。業種を問わずインタラクティブ動画の引き合いは多くなっています。
また、在宅勤務の広がりから、「動画視聴時間」にも変化が起きていることがわかっています。こういった視聴側の変化も取り入れていくのがマーケティングとして重要です。
※2ウェビナー:ウェブ+セミナーの造語で、オンラインで行われるセミナーを指します。
※3 インタラクティブ動画:一方的に動画を流すのではなく、動画に対してユーザーがアクション(選択)を行うことでその内容が変化する双方向性の動画コンテンツ。

緊急事態宣言前後における時間帯別視聴者割合のポイント差

小川:そうですね、コミュニケーションのデジタル移行が加速しているのは間違いありません。対面コミュニケーションが減り、その補完としてデジタルコミュニケーションに取り組まれるケースが増えています。そのなかで、BtoC企業は以前から動画マーケティングへの取り組みが進んでいましたが、最近になってBtoB企業からの引き合いの割合が増えています。
BtoB企業からのご相談のトレンドは、「オンライン展示会用動画」です。オンライン展示会では、製品やサービスの説明をPowerPointのスライドで行っても、視聴者にはなかなか伝わらないのが実状です。オンラインでのプレゼンテーションには、その企業の「動画コンテンツの活用度」や「動画マーケティングへの取り組み経験」が大きく影響していると感じています。動画活用の熟練度によって、デジタルマーケティングの成否が影響されるということではないでしょうか。
例えば、オンラインセミナーをアーカイブとしてYouTubeに残すケースも増えていますが、その対応一つを取っても差は出てきます。視聴者は1時間を越えるアーカイブ動画をすべては見ません。自分の見たい部分にピンポイントでアクセスするために、YouTubeのディスクリプションやタイムラインを活用します。これは知識や経験があれば企業の担当者が無料でできることですが、動画をアップするだけで活用していないケースが多くあります。動画活用への取り組みのスタートとして、まず「お金を掛けずにできることをしっかりやる」ことも重要です。

磯野:動画はコストが高いという印象を持たれがちですよね。しかし、DXに取り組もうと検討すると、システムの予算は動画施策よりも桁が1つ2つ多いです。小川さんがおっしゃるように動画の活用はコストゼロでもはじめられます。動画への投資は他のシステムへの投資などに比べ非常にリーズナブルな手法であることにいち早く気付き、有効活用した企業が一歩先を行く状況だと思います。

小川:そうですね。展示会用以外のトレンドとしては、「インナー向けの教育ツール」として利用される動画が増えています。例えば金融系の無形商材のように、リリースが頻繁であったり変更が多い商材の教育ツールです。また、外国人労働者が多い現場では文字のマニュアルでニュアンスを伝えるのは難しいので、動画の活用が有効で引き合いも増えています。接客でのお辞儀や目を合わせて話をする意味や方法。そういったものは動画であれば行動と意味をきちんと伝えられますが、テキストだけでは難しいですよね。テロップも日本語と英語を併記すれば、日本語の勉強になります。今後確実に日本の人口は減り、海外の労働力が増えていくなかで、動画の力が生かされる場面は増えていきます。

磯野:確かにそのようなケースであれば、教育担当者のリソースを大幅に削減できますね。セミナーなどでも同じですが、同じ人が基本的には同じ内容を何度も繰り返すようなものは動画化の恩恵が大きいと言えます。説明品質の均一化、反復性は動画の明確な強みですね。

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<コロナで影響のあった動画ニーズ>

  1. 営業支援用動画
  2. オンライン展示会用動画
  3. インナー教育用動画

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動画は作る目的から逆算して制作します。「なんとなく動画化」ではマーケティングとして失敗してしまいます。

――この記事をご覧になっている方にも参考となるような、動画マーケティングのポイントを教えて下さい。

磯野:動画施策を社内で立案する際には、「制作」と「配信」を両輪として検討することが望ましいですが、どちらかに偏ってしまっているケースが多くあります。動画を一つのコンテンツではなくマーケティングとして捉え、ファネル設計をすることが重要です。何人がページに来て、何人が動画を視聴して、何人がコンバージョンするかという設計ですね。しかし、制作と配信の両方を考えられる人はあまりいないのが実状です。外部のプロフェッショナルに相談するのが最も効率がよく、早いと思います。

(仮称)動画制作と動画配信の関係図

小川:磯野さんがおっしゃるように、実施時の注意点はやはり「目的」と「ファネル」です。動画を作る目的と、そのためにどこで(場所)、誰に(人)、何で(メディア・デバイス)、何を(コンテンツ)見てもらうのか、といった動画の設計をするべきですね。最近、1分30秒ほどの尺の動画の需要が多いですが、必ずしもすべてのケースでそれが適切というわけではありません。セミナーや展示会であれば、より長尺でも問題ありません。その代わり、きっちりと目次を作る必要があります。これらは目的から逆算した設計で成り立っています。ご相談いただく際には作りたい動画のイメージに加え、その動画の「活用シーン」などを伺いながら全体の設計を行います。それがなく、「とりあえず動画化」というケースでは、残念ながらマーケティングとして失敗するケースが多くなってしまいます。

動画マーケティングのポイント フェーズに応じた動画活用

磯野:皆さんプライベートでYouTubeなどをご覧になるので、昔よりは動画に対する素地は高まっているのですが、視聴者としての素養と発信側の素養は異なります。発信側にはマーケティング的視点が重要です。
ここまでのお話は、これから動画マーケティングに取り組む方に向けたものがメインでしたが、既に動画マーケティングを進めている方はペルソナで悩むパターンが多いように感じます。マーケティングの鉄則として、コミュニケーションの効果は最適化することで高まります。“動画の配信対象の属性や特徴が広い”、“動画の配信対象は広いが伝え方は最適化したい”という場合には「OneDougaクラウド」のインタラクティブ動画をおすすめしています。動画の共通部分で基本的なブランドイメージやベースとなる製品・サービスの機能を伝え、訴求する内容は配信対象ごとの“知りたいこと”や“探したいこと”に応じて切り替えることで、マーケティング効果の最大化を図ることができます。

――元々DMなどの紙のツールでも、訴求の切り分けやバリエーション展開は手法として確立されていますよね。動画で行う場合の違いは何でしょうか?

小川:デジタル全般の話になりますが、やはり詳細な計測ができることですね。このパターンはコンバージョンが低い、このパターン離脱が早いなど、さまざまな分析を行い改善につなげられます。動画であれば、訴求バリエーションをあらかじめ複数制作しておき、配信が終わった後の分析結果に応じて、各パターンのデータでよかった箇所を組み合わせて改善することができます。

磯野:効果検証という面で、動画でも視聴データが重要というのは間違いないのですが、「動画の視聴データをどう有効活用する」かというのは一歩進んだテーマです。それがしっかりとできている企業は、実は日本でもほとんどありません。しかし、カスタマーデータプラットフォーム※4が企業の資産となっている今、そこに動画の視聴データもすぐに取り込まれるようになるはずです。カスタマーデータプラットフォームと動画が連携し、YouTubeで見ている人はこんな属性、Instagramで見ている人はこんな属性といったデータが貯まっていく。コンテンツの視聴時間でホットさを判定できたり、どのメディアで、どのコンテンツを、どの程度見ているか、といった情報をベースに“ファネルのどの段階”にいるのかを分析できたりする。それは、広告の世界ではもう実現され、自動化もされている領域です。動画もそう遠からず実現されるでしょう。
※4:顧客の属性や行動データなどを統合した顧客情報のプラットフォーム。個人を軸にオンライン・オフラインの活動を統合管理することで、最適な顧客コミュニケーションを図る仕組み。

「クリエイティブ」と「配信」がタッグを組む協業は、動画マーケティング市場全体にとって、意味があるものとなります。

――動画マーケティングには今後どのような可能性が広がっているのでしょうか?

磯野:今後のマーケットの開拓余地として一番大きいのは、アウトバウンドやインバウンドに向けた「多言語動画の活用」だと予測しています。多言語になれば同じコンテンツでグローバルに展開することもできます。グローバル展開となれば動画表現のわかりやすさは大きな武器です。
企業の大きさを切り口に考えると、大企業はDXを推進するなかで個人単位の視聴を捕捉しマーケティングに生かしていく。そこまでの体力が無い中小企業は、費用対効果の高い施策として、自社のWebサイトや製品サイトで動画を採用する取り組みが進んでいくと思います。
コミュニケーションのデジタル化が進めば、当然リアルでのコミュニケーションは相対的に減ります。しかし、デジタルのテキストと画像でのコミュニケーションに終始すると、ユーザーとしては物足りなさが生まれます。それを補うことができるのが動画コンテンツだと思います。

小川:動画は誰にでも作れます。1から10まですべての動画を制作会社に依頼する必要はありません。予算的に外部への発注が難しそうであれば、まずは自分たちで作ってみる。専用の高価な機材もソフトも必要なく、スマホがあれば誰でも作れますからね。ただ、社内の制作クオリティでは自社のブランドコントロールの基準に達しないと判断した際には、我々をはじめとするプロに発注していただくのがよいと思います。

磯野:私の子どもがいま小学校6年生ですが、自分でSNSに上げる動画を編集しています。そういった子どもたちが社会に入ってくれば動画マーケティングも大きく変わりますね。

小川:そうですね。今の高校生や大学生などの多くがTikTokやInstagramに上げる動画の編集をしている時代です。そして10年もすれば、そういったデジタルネイティブ世代、動画世代が企業である程度の決裁権を持つようになり、動画のマーケティング活用の垣根は近いうちに取り払われるのは間違いありません。

磯野:ライブ配信の活用も今後ますます広がっていきますね。ライブ配信に関してはSNSを中心としたコミュニティやプラットフォームと密接な関係があるので、そちらと相互に発展していくと思います。

小川:プラットフォームだけでなく、広告として配信されたり、メディアに掲載されたりする動画も、ブラウザや動画プレーヤーに依存せず、より自由度やインタラクティブ性が高まれば、今とは違う新しい活用方法も次々生まれていくでしょうね。

磯野:そういった意味では、動画マーケティングの研究会や協会のような組織・団体があるといいなと思います。まだまだ手探りで、かつ属人化されている側面も強い領域ですからね。

――最後に改めて、OneDougaクラウドとW CREATIVEの協業により、今後期待するシナジーをお聞かせください。

磯野:企業の動画へのニーズは複雑化し活用シーンも増えています。それに対応できる「クリエイティブ」と「配信」がタッグを組むことが基本的な相乗効果です。さらに、双方の顧客への提案、支援領域の拡張が期待できると考えています。

小川:スマホ上の可処分時間を奪い合うデジタルマーケティングの世界で、動画はテキストよりも時間当たりの情報量が多く、結果的にコミュニケーションの総量を増やすことができるコンテンツです。そのなかで、私たちは比較的安価な制作に対応できるクリエイターのアサインから、CM級のリッチな動画制作に対応できるチームまで組むことができます。予算面で今までは諦めてしまっていた企業にも小さなロットから提供し、動画コンテンツの活用の場を広げられるのが大きなシナジーです。
そして、動画クリエイターのなかには“職人気質”で、広告や動画のマーケティング活用に弱い人もいます。そういった人たちに、我々からマーケティングのエッセンスをブレイクダウンできれば、クリエイターの成長、ひいてはマーケット全体の拡大にもつながっていきます。今回の協業は動画マーケティング市場全体にとっても意味のあるものだと考えています。

対談のポイント振り返り

  • OneDougaクラウドとW CREATIVEの動画クラウドソーシングの融合
  • 協業により双方の顧客にさらなる価値を提案できる
  • コスト面から動画活用に踏み切れなかった企業に、少額からのサポートを実施
  • 動画活用には発注側のノウハウも必要
  • 動画制作はコンテンツとしてだけでなくマーケティングとしての設計がポイント
  • 日常的に動画編集をしている今の高校生、大学生が社会人になることで動画マーケティングは劇的に浸透する
  • 動画の視聴データは企業のマーケティング資産としてすぐに利用されるようになる
  • 企業にとって動画はリーズナブルな投資手法
磯野周司

共同印刷株式会社
OneDougaチームリーダー 磯野 周司

大手広告会社、住宅関連の事業会社、外資系Webサービス会社を経て、現職に至る。2015年2月よりパーソナライズド動画を研究し、同年、動画配信サービス「OneDouga(ワンドウガ)」を立ち上げる。現在、共同印刷において、動画ビジネスグループを管轄し、動画配信システム「OneDougaクラウド」の開発、動画・映像の各種サービス開発、コンサルティングに従事。

小川大介

W CREATIVE株式会社
代表取締役社長 小川 大介
豪州留学後、大手電機メーカーを経て、外資系インターネットコンサルティング会社に入社。コンサルタントとしてデジタル広告における戦略立案、プランニング、KPI策定、キャンペーン分析などを行う。2014年、外資系クラウドソーシングプロバイダーの日本法人立上げメンバーとして事業責任者を務める。事業戦略やマーケティング戦略の策定から実行まで携わり、事業拡大に大きく貢献した。2019年、世界100カ国の動画クリエイターと繋がるクラウドソーシング事業会社、W CREATIVE株式会社を設立。